〈医療〉 若くして心筋梗塞の可能性が…藤田ニコルさんも公表した遺伝疾患「家族性高コレステロール血症」2026年1月26日
- 〈今日のポイント〉若くして心筋梗塞が起きる
約2年前にモデルの藤田ニコルさんが公表して話題となった、遺伝疾患の「家族性高コレステロール血症」。この病について、診療ガイドラインの作成委員も務めた香川大学の南野哲男教授(循環器・腎臓・脳卒中内科学)に聞きました。
動脈硬化が進行 心臓発作の危険
――長い病名ですが、どのような疾患ですか。
家族性高コレステロール血症は、脂質異常症の一種で、遺伝が原因のタイプです。悪玉といわれるLDLコレステロール(LDL―C)が、血液中で異常に増えてしまう病気です。
家族性高コレステロール血症の患者は、生まれつき脂質異常症を起こしてしまう体質をもっているといえます。
――体質?
血中のLDL―Cは、LDL―C受容体と呼ばれるタンパク質を介して肝臓に取り込まれ、多くは分解されます。しかし、この病の患者には、LDL―C受容体や関連する遺伝子にもともと変異があり、LDL―Cが肝臓に回収されず血中にたまります。
LDL―Cの値は、高ければ高いほど動脈硬化が進行します。
患者は心筋梗塞や狭心症など、命に関わる冠動脈疾患を引き起こすリスクが高まります。
冠動脈疾患を起こすリスクは、この病でない人と比べて10~20倍で、男性は30代から、女性は50代からという若い年齢で発症しやすくなります。
300人に1人 親からの遺伝
――家族性とありますが、遺伝するのですか。
はい。多くの場合は両親のどちらかが遺伝子を持っており、300人に1人いるとされる比較的頻度の高い病気です。一方で、両親ともに患者であるケース(100万人に1人程度)もまれにあり、こちらは症状が重く、10歳以下でも心筋梗塞を起こす可能性がある国の指定難病です。
デリケートな遺伝疾患なので、遺伝カウンセリングを行っている医療機関もあります。
効果の高い薬物療法
――治療法は?
薬物療法がメインです。
多くの患者は1日に1回、LDL―Cの生成を抑える薬(スタチン)を飲みます。その効果は大きく、10歳前後から飲み続ければ、心筋梗塞が起きるリスクが、患者でない人と同等まで激減したという報告もあります。
まれに、筋肉痛や肝機能障害などの副作用が起こります。その場合は服用をやめ、患者が15歳以上なら、別の薬剤の注射などを検討します。
――他の治療法は?
脂質異常症の治療に欠かせない、食事療法と運動療法も併用します。
食事療法はコレステロールや脂肪の摂取を抑えてLDL―Cの生成量を減らします。また、栄養バランスも整えて、動脈硬化の進行を防ぎます。
その上でLDL―Cは、半分以上が体内合成です。単にコレステロールの多い食品(卵など)を控えるより、合成を促す飽和脂肪酸(脂身の肉、バター、生クリーム、洋菓子などに多い)の制限が重要です。
運動療法では速歩など中等度以上の運動を30分以上、週3日行います。全身の動脈硬化リスクを減らすことが期待できます。
診断率は1%未満
この病は、命に関わる発作が起きるまで自覚症状がなく、発見がとても困難です。
患者は、人口から推計すると約40万人ですが、診断率(発見された比率)は1%未満との報告もあり、大部分の患者は見逃されています。
――どうしたらよいのでしょうか。
親やきょうだいなどの親族が、若い年齢で心筋梗塞などを起こしたケースがあれば、可能性を疑って、かかりつけ医などに相談してください。
なお、アキレス腱が太く盛り上がることがあります(黄色腫)。
親患者を見つける“香川モデル”
その上で近年、“香川モデル”が注目されています。
――香川モデル?
香川県では、2012年から全17市町で、小学4年生に「小児生活習慣病予防健診」を行い、問診や血液検査をしています。そして18年から、LDL―Cが多い児童に対し、この病の可能性があると伝え、受診を勧めています。
発見できる率の向上は著しく、これまで県内で450人以上の患者が見つかっています。
県内の人口は約90万人ですので、診断率は15%以上です。
――全国の15倍以上!
両親ともに患者だった重症例も複数、見つかりました。
何より、子どもの患者が見つかれば、親や親族にさかのぼって発見できます。この病は「家族性」です。親子を同一の医療機関でフォローできることは大切です。
――症状が重い、成人患者も見つかるのですね。
香川ではそれ以前は、大人の罹患者が心臓発作などを起こして運ばれたことで、患者であると判明するケースがほとんどでした。その後に、子どもなど親族患者の発見に至りますが、発作を起こした本人は救えませんでした。
香川の健診対象は小学4年生で、親の多くは働き盛りの40代です。彼らに起こる、命にかかわる心臓発作や脳梗塞を未然に防げる意義はとても大きいと考えます。
さらに、疑い例や発見例が増えて学術的な蓄積ができたことで、この病自体の研究にも役立ち、診断基準の改定につながる可能性も指摘されています。
LDL―Cが高い方は生活習慣を見直し、それでも改善しない場合は、体質的な要因も疑って、受診を検討してほしいと思います。
行政の後押し
“見つけにいく”という積極的な働きかけで、発見困難なこの病の患者の診断率を大きく上げた香川県。推進者の一人である南野先生だが、別の課題に頭を悩ませている。
「血中のLDL―Cが多いと指摘された児童の、約4割が受診しないのです。ポスターや講演で啓発していますが、この割合が下がりません。発見さえすれば、重症化を防げる病なのですが……」
保護者が受診させない理由は明らかでないが、多忙、学校から届く“お知らせ”の多さ……さらに「心筋梗塞のリスクを高める病である、という認識が薄いこと」も、南野先生は理由として推測する。ある調査では、この病から起きている脂質異常症が心筋梗塞の引き金になる、と知っていたのは、まさに親世代の40代で3割だったという。
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欧州スロベニアでは、国を挙げて5歳児に早期診断を行っているという。また、日本全体で早期診断できれば、年間2千人前後の死亡を防ぎ、約160億円もの医療費が削減できる試算もあるのだそう。
しかし、健診とこの病の発見を結び付けている自治体は、香川以外では静岡の一部で始まった程度だと先生は語る。
検査を活用するなどして、この病の患者を発見できる道筋を、いかにしてつくれるのか。行政の後押しで助けられる命が、ここにある







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